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要素ライブラリ

FrontISTR では,解析対象の幾何形状,支配方程式,必要な自由度に応じて,線要素,平面要素,ソリッド要素,インターフェース要素,梁要素,シェル要素を使い分ける.このページでは,ユーザが要素を選ぶうえで必要になる「どの解析にどの要素が使えるか」「1次ソリッド要素の定式化をどう選ぶか」「構造要素とソリッド要素をどう併用するか」「構造解析の接触で使える要素面はどこまでか」を整理する.

入力キーワードの具体的な書式はキーワードリファレンスを参照されたい.また,形状関数,剛性行列,ロッキング回避手法の数学的導出は理論マニュアルで扱う.

要素ライブラリの全体像

FrontISTR が現行ソースで扱う要素カテゴリは,線要素,平面要素,ソリッド要素,インターフェース要素,梁要素,シェル要素に大別できる.連続体をそのまま離散化したいときは平面要素・ソリッド要素を,細長い部材や薄肉構造を効率よく表したいときは梁要素・シェル要素を選ぶ.熱解析では,同じ形状カテゴリでも構造解析とは別の組立て経路を通るため,利用可能な要素は必ず一覧表で確認した方がよい.

要素タイプ番号は原則として 3 桁で表される.先頭桁は大まかな要素カテゴリを表し,残り 2 桁で形状と系列を区別する.たとえば 231/232 は三角形平面 1 次/2 次,341/342 は四面体 1 次/2 次,361/362 は六面体 1 次/2 次の系列である.ただし,301 が 2 節点トラス要素であることや,743 が 9 節点シェル要素であることから分かるように,すべての系列が単純に「末尾 1=1 次,2=2 次」と整理できるわけではない.番号だけで機械的に判断せず,後続の表で確認するのが確実である.

要素ライブラリ

図4.1.1 要素ライブラリ

表中の記号は次の意味を持つ.

  • :対応している.
  • :対応していない.

ここで「動的」は過渡動的解析を,「固有値」は固有値解析および周波数応答解析の基底となるモード計算を指す.熱欄は,熱伝導解析で使用できる要素だけを としている.

連続体要素・インターフェース要素

要素種類 要素タイプ 節点数 構造自由度/節点 熱自由度/節点 形状・次数 応力 動的 固有値 定式化・備考
線要素 111 2 1 2節点線要素 熱伝導用の1次元要素
線要素 112 3 3節点線要素 現行の解析機能では対応していない
平面要素 231 3 3 1 三角形1次要素 2次元連続体
平面要素 232 6 3 1 三角形2次要素 2次元連続体
平面要素 241 4 3 1 四角形1次要素 2次元連続体
平面要素 242 8 3 1 四角形2次要素 Serendipity族
ソリッド要素 301 2 3 1 2節点トラス要素 命名規則の例外.熱解析には対応していない
ソリッド要素 341 4 3 1 四面体1次要素 完全積分,選択的辺・節点平滑化
ソリッド要素 342 10 3 1 四面体2次要素
ソリッド要素 351 6 3 1 五面体1次要素
ソリッド要素 352 15 3 1 五面体2次要素
ソリッド要素 361 8 3 1 六面体1次要素 完全積分,B-bar,非適合,F-bar,u-p混合
ソリッド要素 362 20 3 1 六面体2次要素 Serendipity族
インターフェース要素 541 4×2 1 四角形面1次要素 ギャップ熱伝達・輻射用.容量行列は持たない
インターフェース要素 542 8×2 四角形面2次要素 対応していない

構造要素

要素種類 要素タイプ 節点数 構造自由度/節点 熱自由度/節点 形状・次数 応力 動的 固有値 定式化・備考
梁要素 611 2 6 1 2節点梁要素 Bernoulli-Euler 梁.熱解析には対応していない
梁要素 641 2×2 3 1 2節点梁要素(自由度混在用) Bernoulli-Euler 梁.熱解析には対応していない
シェル要素 731 3 6 1 三角形1次要素 MITC3
シェル要素 732 6 三角形2次要素 現行の解析機能では対応していない
シェル要素 741 4 6 1 四角形1次要素 MITC4
シェル要素 743 9 6 四角形2次要素 MITC9
シェル要素 761 3×2 3 三角形1次要素(自由度混在用) MITC3.ソリッドとの自由度混在用
シェル要素 781 4×2 3 四角形1次要素(自由度混在用) MITC4.ソリッドとの自由度混在用
  • 1次ソリッド要素のうち 341 と 361 には定式化オプションがあり,同じ形状でも選択肢が複数ある.
  • 構造解析で接触を使う場合,2 次要素の接触面には対応していない.
  • 構造要素の 611/731/741/743 は 6 自由度節点であり,ソリッド要素と直接混在できない.混在には 641/761/781 を用いる.
  • 梁要素 611 は熱応力,重力,圧力,遠心力を考慮した解析に対応していない.梁要素 641 は圧力,遠心力を考慮した解析に対応していない.
  • 線形動解析では,シェル要素 731/741/743 を用いた並列計算に対応していない.これらの要素以外では並列計算を利用できる.

定式化オプションの選び方

1 次ソリッド要素では,形状だけでなく定式化も選択対象になる.特に六面体 1 次要素 361 は,問題の性質に応じて 4 種類の定式化を使い分ける実装になっている.また,四面体 1 次要素 341 には平滑化 FEM の選択肢がある.いずれも入力上は !SECTIONFORM341FORM361 で切り替える.

六面体1次要素(361)

現行ソースでは,FORM361 として FIBBARICFBARUP の 5 つが選べる.FORM361 を省略した場合の既定値は解析種別で変わり,静的解析・過渡動的解析の小変形では IC,同じく大変形では FBAR,固有値解析では IC,それ以外では FI が設定される(UP は明示指定時のみ有効)。

  • FI:標準的な完全積分要素である.曲げではせん断ロッキング,非圧縮に近い変形では体積ロッキングの影響を受けやすいため、要素性能の比較対象として使うものである.
  • IC:非適合モードを加えた定式化であり,曲げ支配の問題でせん断ロッキングを抑えたいときの第一候補になる.線形小変形で既定値になっている.
  • BBAR:体積ひずみ成分を補正する B-bar 要素であり,体積ロッキングが支配的な問題に向く.非圧縮に近いゴム状材料やポアソン比の大きい材料で検討対象になるが、体積ひずみの計算で線形を仮定しているため有限回転を考慮できない.通常はF-Bar要素の使用を推奨する.
  • FBAR:変形勾配の体積成分を補正する F-bar 要素であり,大変形かつ非圧縮性の影響が強い問題に向く.大変形解析で既定値になっている.
  • UP:変位と要素圧力を独立に扱う u-p 混合要素であり,応力を偏差成分と圧力に分離して準非圧縮(ポアソン比が 0.5 に極めて近いゴム状材料や塑性変形後の金属など)の体積ロッキングを回避する.圧力自由度は 1 要素あたり 1 個(要素内で一定)とし,要素レベルで静的縮約する.微小変形・Total Lagrange・Updated Lagrange に対応する.

使い分けに迷った場合は,まず微小変形の構造解析では IC,大変形や超弾性では FBAR をまずは使用し,せん断ロッキングが主問題なら IC を比較するのが実用的である.準非圧縮性が支配的で圧力場を陽に扱いたい場合は UP を検討する.詳細な理論背景は理論マニュアルを参照されたい.

四面体1次要素(341)

現行ソースでは,FORM341 として FISELECTIVE_ESNS が選べる.既定値は常に FI である.SELECTIVE_ESNS を選ぶと,セットアップ時に平滑化要素のコネクティビティが追加生成され,選択的辺・節点平滑化 FEM として扱われる.

  • FI:標準の四面体 1 次要素である.メッシュ生成は容易だが,曲げではせん断ロッキング,非圧縮性に近い条件では体積ロッキングの影響を受けやすい.
  • SELECTIVE_ESNS:エッジベース/節点ベースの平滑化を導入して,四面体 1 次要素で現れやすいせん断ロッキングや体積ロッキングの影響を緩和する.形状上の制約から四面体を使用せざるを得ない場合に有力である.

形状上の都合で 341 を使う必要があり,標準の FI でロッキングの影響が強いと感じる場合は SELECTIVE_ESNS を検討するとよい.逆に,六面体 1 次要素を使える状況なら,まず 361 系列で ICBBARFBAR を検討する方が一般には選択肢が広い.

SELECTIVE_ESNS を MPI 並列で用いる場合は,領域分割時のオーバーラップ深さに注意が必要である.エッジベース/節点ベースの平滑化では,対象要素に隣接する要素の量を平均化するため,部分領域内の要素剛性を組み立てるのに「隣の隣」の要素情報が必要になる.既定のオーバーラップ深さ 1 では領域境界付近の平滑化対象が不足するため,!PARTITIONDEPTH=2 を指定して領域分割すること.設定の詳細は領域分割のオーバーラップ深さを参照.

構造要素とソリッド要素の併用

同じ「梁要素」「シェル要素」でも,構造解析と熱解析では自由度の扱いが異なる.そのため,ソリッド要素との併用ルールも両者で同じではない.

構造解析の場合

構造解析では,解析全体で節点自由度数 ndof が 1 つに固定される.ソリッド要素は 1 節点当たり 3 自由度(並進)であるのに対し,標準の梁要素 611 とシェル要素 731/741/743 は 1 節点当たり 6 自由度(並進+回転)を持つ.このため,611,731,741,743 をソリッド要素と直接同じ節点自由度系で混在させることはできない.

この制約を回避するために用意されているのが,3 自由度節点版の 641,761,781 である.これらは,並進自由度を持つ節点と回転自由度を持つ節点を分離して配置することで,解析全体の ndof=3 を保ったまま梁・シェルの回転自由度を表現する.対応関係は次の通りである.

  • 611 に対応する自由度混在用梁要素が 641 である.
  • 731 に対応する自由度混在用三角形シェル要素が 761 である.
  • 741 に対応する自由度混在用四角形シェル要素が 781 である.

自由度混在用要素では,回転自由度は独立した「回転自由度を持つ節点」に割り当てられる.そのため,拘束条件や集中荷重を与えるときは,回転自由度を持つ節点に対する 1,2,3 自由度として入力する必要がある.並進側の節点に与える 1,2,3 自由度と,回転側の節点に与える 1,2,3 自由度は,節点が異なることで区別される.

したがって,梁・シェルだけでモデル化するなら 611/731/741/743 を使い,ソリッド要素と併用するなら 641/761/781 を選ぶ,というのが基本方針になる.

熱解析の場合

熱解析では hecMAT%NDOF = 1 が設定され,節点自由度は温度の 1 自由度で統一される.この意味で,構造解析における「3 自由度節点版を使わないと混在できない」という問題は発生しない.

ただし,熱解析で対応している構造要素は 731 と 741 に限られる.611,641 および 301 は熱解析には対応していない.このため,熱解析で要素を選ぶときは,構造解析での自由度混在の考え方ではなく,前節の一覧表で熱欄が の要素を基準に選ぶのが安全である.

コネクティビティと面番号の定義

以下の図と表は,HEC-MW 形式で入力する節点並び順と面番号の対応を示す.2 次要素の中間節点番号について,FrontISTR 内部の形状関数実装が前提とする並びとの対応関係を知りたい場合は,理論マニュアル「要素ライブラリ」を参照されたい.

線要素

線要素

三角形平面要素

三角形平面要素

面番号 一次 二次
1 1 - 2 1 - 6 - 2
2 2 - 3 2 - 4 - 3
3 3 - 1 3 - 5 - 1

四角形平面要素

四角形平面要素

面番号 一次 二次
1 1 - 2 1 - 5 - 2
2 2 - 3 2 - 6 - 3
3 3 - 4 3 - 7 - 4
4 4 - 1 4 - 8 - 1

四面体要素

四面体要素

面番号 一次 二次
1 1 - 2 - 3 1 - 7 - 2 - 5 - 3 - 6
2 1 - 2 - 4 1 - 7 - 2 - 9 - 4 - 8
3 2 - 3 - 4 2 - 5 - 3 - 10 - 4 - 9
4 3 - 1 - 4 3 - 6 - 1 - 10 - 4 - 8

五面体要素

五面体要素

面番号 一次 二次
1 1 - 2 - 3 1 - 9 - 2 - 7 - 3 - 8
2 4 - 5 - 6 4 - 12 - 5 - 10 - 6 - 11
3 1 - 2 - 5 - 4 1 - 9 - 2 - 14 - 5 - 12 - 4 - 13
4 2 - 3 - 6 - 5 2 - 7 - 3 - 15 - 6 - 10 - 5 - 14
5 3 - 1 - 4 - 6 3 - 8 - 1 - 13 - 4 - 11 - 6 - 15

六面体要素

六面体要素

面番号 一次 二次
1 1 - 2 - 3 - 4 1 - 9 - 2 - 10 - 3 - 11 - 4 - 12
2 5 - 6 - 7 - 8 5 - 13 - 6 - 14 - 7 - 15 - 8 - 16
3 1 - 2 - 6 - 5 1 - 9 - 2 - 18 - 6 - 13 - 5 - 17
4 2 - 3 - 7 - 6 2 - 10 - 3 - 19 - 7 - 14 - 6 - 18
5 3 - 4 - 8 - 7 3 - 11 - 4 - 20 - 8 - 15 - 7 - 19
6 4 - 1 - 5 - 8 4 - 12 - 1 - 17 - 5 - 16 - 8 - 20

梁要素

梁要素

3自由度節点による梁要素

3自由度節点による梁要素

節点 1,2 は並進自由度,節点 3,4 は回転自由度を持つ.

三角形シェル要素

三角形シェル要素

面番号 一次 二次
1 1 - 2 - 3 [front] 1 - 6 - 2 - 4 - 3 - 5 [front]
2 3 - 2 - 1 [back] 3 - 4 - 2 - 6 - 1 - 5 [back]

3自由度節点による三角形シェル要素

3自由度節点による三角形シェル要素

節点 1,2,3 は並進自由度,節点 4,5,6 は回転自由度を持つ.

面番号 一次
1 1 - 2 - 3 [front]
2 3 - 2 - 1 [back]

四角形シェル要素

四角形シェル要素

面番号 一次 二次
1 1 - 2 - 3 - 4 [front] 1 - 5 - 2 - 6 - 3 - 7 - 4 - 8 [front]
2 4 - 3 - 2 - 1 [back] 4 - 7 - 3 - 6 - 2 - 5 - 1 - 8 [back]

3自由度節点による四角形シェル要素

3自由度節点による四角形シェル要素

節点 1,2,3,4 は並進自由度,節点 5,6,7,8 は回転自由度を持つ.

面番号 一次
1 1 - 2 - 3 - 4 [front]
2 4 - 3 - 2 - 1 [back]
図4.1.2 コネクティビティおよび面番号

関連項目